男性のドライオーガズムに関するスラングは、使う人によって定義が微妙に異なる。
ある言葉が誤用、転用、妄用される内に、その言葉の原義に微妙に異なる意味が上乗せされて行くからだ。
そこで、13の代表的なスラングを「用法」という観点から整理してみた。
目次
ウェットオーガズム
主に、男性の場合は射精、女性の場合は潮吹きによるオーガズムを指す。体液が放出されることにより絶頂に達することをウェットオーガズムと言う。
単に「ウェット」と言うこともあり、「ドライオーガズム」の対義語となる。
男性は一度射精すると次の射精まで時間がかかる。この期間を「賢者タイム」という。これが男性のウェットオーガズム最大の特徴となっている。
賢者タイムの有無によりウェットとドライに別れ、ウェットは賢者タイムありの単発のオーガズム、ドライは賢者タイムなしの連続のオーガズムとなる。
ドライオーガズムという言葉が普及するまで、世間一般で、射精によるオーガズムを特に「ウェットオーガズム」と呼ぶ慣わしはなかった。
というのも、男性のオーガズムと言えば、一部を除いて、射精=単発イキしかなかったからである。この固定観念を粉砕したものがドライオーガズムであった。
ドライオーガズム
元々は、射精を伴わない絶頂全般を指し、ウェットオーガズムの対義語である。
賢者タイムがないので連続イキ=マルチプルオーガズムが可能となるのが最大の特徴と言えよう。
エネマグラやアネロスの普及により、特にアナル性感によるドライオーガズムを指す傾向が強い。
このアナル性感によるドライオーガズムは、男性型と女性型に分かれ、男性型を「ドライオーガズム」、女性型を「メスイキ」と区別するようになる。
故に「ドライオーガズム」という言葉には以下の3つの用法があると考えられる。
- 全てのドライオーガズム
- アナル性感のみを指すドライオーガズム
- 男性型のみを指すドライオーガズム
現状としては、これら複数の意味が混沌とした状態で使用されている。
ケツイキ
この語は読んで字の如く「ケツ=アナル」による「イキ=オーガズム」=アナルオーガズムを意味する。
元々は、男性同士のアナルセックスでウケまたはネコ(=挿入される側)がドライオーガズムに達することを意味したが、それが転じて、現在では性別やジェンダー、ウェットかドライに関係なくアナルオーガズム全般を指す俗語となっている。
中イキ
「なかイキ」と読む。
外性器ではなく、内性器によって達せられるオーガズム。即ち、ペニスやクリトリスなどの外から目視できる器官以外で絶頂に達することを中イキという。
逆に、外性器でオーガズムに達することを「外(そと)イキ」という。ペニスやクリトリスはもちろんのこと、会陰や乳首を刺激して絶頂に達することも外イキに分類される。
中イキは、一般的には、女性がGスポットや子宮で絶頂することを指していたが、それが転じて男性の絶頂に関しても用いられるようになった。
男性のドライオーガズムも、前立腺、精嚢、直腸、結腸など、内性器でオーガズムに達するため中イキとなる。
賢者タイム
男性は射精した瞬間に、下垂体という脳の部位からプロラクチンというホルモンが分泌される。このホルモンの作用により、一時的に性欲や勃起力が低下し、快感ややる気の元となる神経伝達物質ドーパミンの分泌が抑制され、賢者タイムが引き起こされる。
医学的には「射精後不応期」「性交後憂鬱」という。ただ単に「不応期」と呼ぶこともあるが、厳密に言えば、不応期とは不特定の細胞や神経の活動電位が発生しない期間を指し、射精に限定されたものではない。
ドライオーガズムでは、射精がないので、プロラクチンが分泌されることはない。故に、連続イキが可能となる。
他に同義語として、賢者モード、虚無タイムなどのスラングがある。
男性型オーガズム
①オスイキ
性別を問わず、男性的なオーガズム全般を指す。
最も一般的な男性のウェットオーガズム(=射精感があり精液が出るオーガズム)だけでなく、④の男性型ドライオーガズムを指し、この場合は特に「メスイキ」の対義語として使用される。
また、ペニスとクリトリスは発生学的に同系のため、女性がクリトリスでイクことを「オスイキ」と解釈することがある。
「オス」や「メス」という言葉は、生物学上の雌雄を分類するだけでなく、性的な意味での雌雄の特徴や要素を指している。
生物学上のオスには性的な意味でのメス的な要素があり、生物学上のメスにも性的な意味でのオス的な要素がある。
だが、ドライオーガズムを語る場合はザックリとペニス&射精=「オス」、それ以外=「メス」と考えて問題ないだろう。
②空イキ
「からイキ」と読む。
射精感はあるが精液は出ない変則的なウエットオーガズム。
賢者タイムがあるが故に、単発で終わる非マルチプルオーガズムとなる。精液が出ないにもかかわらず、ドライオーガズムとしては認定されていない。
なぜなら、SMプレイなどで尿道を締め付けて射精を妨げたり、一時的または慢性的な機能障害が原因となっているからだ。
本来はウエットオーガズムだったものが何らかの影響により結果として無射精になったという考えから、ドライオーガズムとして分類されていない。
また、「射精感はあるが精液は出ない」という定義が全く同じなため、④男性型ドライオーガズムを意味することもある。ひとつの言葉がウェットだったりドライだったりして全くややこしい。
③トコロテン
ゲイのアナルセックスから発生したスラングで、ペニスの刺激なしにアナルのピストンのみで射精に至るウエットオーガズム。
ウケまたはネコに射精の意志があろうとなかろうと、セメまたはタチ(=挿入する側)に機械的に射精させられてしまうという特徴がある。
勃起した状態でトコロテンすると通常の射精と同様に一瞬のオーガズムで終わる傾向にあるが、勃起していない状態でトコロテンするとダラダラと精液が漏れ出てその間は射精感が続く。
アナラーの間では、トコロテンと言えば、後者の勃起していない状態でダラダラと精液が漏れ出るパターンが好まれている。
また、賢者タイムがあるという説とないという説があり、実際にマルチプルオーガズムが可能な場合と不可能な場合がある。
勃起しない状態でトコロテンすると賢者タイムに入らない傾向があるのみで、どうすれば確実に賢者タイムなしのトコロテンが出来るかは分かっていない。
また、明らかにウェットオーガズムであるものの、マルチプルオーガズムが可能な場合があるので、ドライオーガズムに分類することもある。主に精嚢を刺激すると発生する。
④男性型ドライオーガズム
射精感はあるが精液は出ないドライオーガズム。ドライオーガズムの代表的な絶頂現象で、ただ単に「ドライオーガズム」と言った場合、この男性型ドライオーガズムを指すことが多い。
前立腺を刺激すると、精液を体外に送り出すポンプ機能が誤発動しこの現象が発生するという。賢者タイムがないので、体力の続く限り何度でもオーガズムが可能となる。オーガズムの最中に次のオーガズムがかぶさることもあり、その快感は射精の十倍から百倍と言われる。
勃起力が上がり、射精量が増えるなど、オス的な要素(=男性機能)が向上する。そのため、ドライオーガズムに至る前に射精やトコロテンしてしまうことがある。故に、これをイキ我慢しなければドライオーガズムは来ない。
メスイキ
元々この語は、下掲「女性型ドライオーガズム」のみを指す語であった。
だが、「男性型ドライオーガズム」をも包含する言葉として誤用されるようになり、やがて「メスイキ」は、賢者タイムのない連続イキを示唆するドライオーガズム全般を指すスラングとなる。
故に、メスイキと言った場合、女性型のみ、男性型のみ、女性型と男性型の両方、3つの用法で用いられる。文脈からどの用法が用いられているかを判別するしかない。ややこしい。
女性型ドライオーガズム=メスイキ
⑤メスイキ肉体型
ペニスや射精などのオス的な要素があまり介在しないマルチプルにしてドライなオーガズム。
野獣のように悶え狂う肉食系女子が感じるオーガズムと同系のオーガズムで、女性の場合はクリトリスやGスポット、男性の場合は精嚢や直腸壁が由来となる。
この肉体型では、クリトリス、射精やトコロテンに関わりのある精嚢が由来となり、メスイキとは言え、まだオス的な要素の名残があると言えよう。
肉体型の特徴は以下の通り。
ペニスが縮み上がり、女性のイク感覚が明確に分かるようになる。それによって世界観がガラリと変わることがある。
ピークに達すると叫び声が体の奥底から絞り出され、自分でオーガズムを制御できなくなることがある。
また、この段階まで来ると、チャクラ、気、クンダリーニ覚醒など、古代宗教の秘技を語り出す者も現れる。なぜなら、それらを実際に体感するからである。
女性型ドライオーガズム全般に言えるが、男性が無自覚に女性型を続けていくと、身も心も女性化することがある。それを防ぐ場合、最後に射精することが推奨されている。
⑥メスイキ精神型
オス的な要素がほぼ介在しないマルチプルにしてドライなオーガズム。
恋人を慈しみ愛情深く抱きしめるような、女性が感じるのと同じ系統のドライオーガズム。ヨガのサマーディ、仏教の三昧と同等の至高の境地とされる。
ドライオーガズムの中で最も難易度が高いと言われており、女性の場合はポルチオ=子宮、男性の場合は直腸壁や男性子宮と言われる前立腺小室が由来とされる。
精神型の特徴は以下の通り。
ペニスが縮み上がり肛門がユルユルに開く。また、全身が性器になったような物理的な体性感覚が生じ、会陰部が膣化して「穴(=やおい穴)」が開いたように感じる。
膣と同様に肛門から愛液(=腸液?)が分泌され潮を吹くこともある。
その他、頭の中が光学的な意味合いで真っ白になり、汗が額をタラタラと流れるように額の内側で脳内物質が滴り落ちるような感覚を覚える。
意識がフルトランス状態に入ることもあり、全てのジェンダーがこのメスイキ精神型を経験すれば、世界に平和が訪れるという。
⑦メスイキ複合型
⑤と⑥を複合したオーガズム。
女性がオーガズムに達する場合、何もクリトリス単体だけ、子宮単体だけでオーガズムに達している訳ではない。
そこには、それら身体器官の開発度合いを始め、環境や意識=セットとセッティングなど、様々な要素が複合的に合わさり、結果として、その時のオーガズムが発生しているのだ。
男性のメスイキ複合型も同様である。むしろ、複合型が元々のオーガズムで、肉体型と精神型の割合いのどちらが高いかと言った比率の問題となる。複合型はその比率が両者ともに高く現れた時の現象と考えられる。
尚、メスイキの方法論としては、当サイト別記事「割と確実なメスイキのやり方」を参照いただきたい。
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